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有料喫煙所というビジネスモデルは浸透するのか?

日本における近年の受動喫煙対策

喫煙問題は昔から取り上げられていますが、印象としては「タバコの煙による健康被害」を思い浮かべる人は多いかと思います。

タバコの受動喫煙による健康被害が問題視されてきたことで世の中全体が禁煙を推奨する流れに向かいました。

近年の禁煙化に向けた動きは2020年4月1日に全面施行された「改正健康増進法」による影響が大きいのではないでしょうか。

法律の改正によって飲食店やオフィス、ホテルやゴルフ場、その他商業施設、公的機関、公共交通機関などでは全面禁煙化の動きが進んだことで建物内に設置されていた灰皿などが撤去されていきました。

日常的に喫煙している人は男性で約27.1%、女性で7.6%となっていて、多くの喫煙者に影響を与えることとなっています。(※)

※情報元:公益財団法人 生命保険文化センターより

改正健康増進法の施行はたくさんの国民に影響を与えるものですが、意外とテレビなどのメディアで大きく取り上げられることは少なく、いまいち国民への認知が浸透していないと感じるのは気のせいでしょうか。

世間は、2020年1月に始まった新型コロナウイルスの話題が連日放送されており、その陰にかくれてしまったと考えられます。

受動喫煙対策を進めたことによる新たな喫煙問題

法律の改正によって建物内での喫煙自体が難しくなり、喫煙している人の姿を見ることが減ってきました。

これによって受動喫煙のリスクが減ったことで非喫煙者にとっては生活しやすい環境に変化したと言えます。

一方で喫煙者の中には屋内で気軽に喫煙することが出来なくなり、不便になったと感じている方は非常に多いのではないでしょうか。

屋外であっても喫煙禁止エリアが設けられていたりして、屋内はおろか屋外であっても喫煙することが難しくなっています。

そのため、都市部においては毎日のように路上喫煙が行われタバコのポイ捨てが問題視されています。

施設の管理者が喫煙室の導入に積極的でない要因とは

施設の管理者は受動喫煙を防止することを目的に、施設内で喫煙を認める場合には、に基準を満たした専用喫煙室を設置することが義務化されました。

罰則のある法律による義務であり、守らなければ法律違反です。しかし、違反していることが発覚してもいきなり罰金が科せられるわけではありません。

違反が発覚した場合はまずは指導や命令などがあり、その後も繰り返し指導されても改善が見られない場合に50万円以下の過料が適用されます。

参考:厚生労働省

喫煙室の導入にはお金と時間がかかりますし、違反時のペナルティが小さく感じることもあり喫煙室の導入が進んでいない店舗もあるのではないでしょうか。

喫煙所の閉鎖によって喫煙所難民が増加

施設等の屋内は完全禁煙にしたものの喫煙室の設置が進んでいないことで喫煙する場所がなくなり、屋外においては喫煙禁止場所が増えてきました。

受動喫煙対策によって受動喫煙による健康被害が減少した一方で喫煙場所が少なくなり、いわゆる「喫煙所難民」が多くなっていることが問題となっています。

喫煙室の減少には新型コロナウイルスの感染防止を目的による影響も大きい。

2020年4月には福井県内の会社の喫煙室にて新型コロナに感染した例があり、その他の都道府県でも喫煙所内にてコロナ感染の報告が相次ぎました。

タバコを吸うときはマスクを外しますし、かつ喫煙室という狭い空間に人が密集するので感染リスクが高いことは容易に想像ができます。

これによって自治体は喫煙所内がコロナ感染のリスクが高いことや3密を防ぐことを目的に各地にある喫煙所を閉鎖するようになりました。

元々たくさんあるわけではない喫煙所が、法律の改正と新型コロナによって減少することとなったのです。

一方で屋外ではタバコのポイ捨てなどが問題に挙がり、喫煙所が必要だという声も高まっています。

有料喫煙所は2012年から存在していた

有料喫煙所とは文字通りお金を支払って喫煙を楽しむ場所で、実は2012年にすでに運用が開始されています。

東京都内ではJR御茶ノ水駅前などに「ippuku」という名の有料喫煙所が3店舗オープンしました。

『ippuku』URL: http://www.ippk.jp

引用元:http://www.atpress.ne.jp/releases/28119/2_2.JPG

利用金額は50円(1回の入場)から利用できるようになっていました。

また、たくさん利用する喫煙者向けに1日利用券(100円)、1週間利用券(500円)、1カ月利用券(1,800円)など、スキー場の回数券のようなチケットシステムがあるので自分のスタイルに 合わせた利用が可能とのこと。

チケットの利用期間中は無制限で何度でも入退場が可能。

営業時間は朝6:00~夜中の24:00までと長いので、早朝の出勤前や残業後でも利用できるので便利な印象はありました。

室内の設備としては壁にコンセントが備え付けられているので喫煙中にケータイやスマホの充電が可能な他、カップのジュースが70円で飲める。

中は広く清潔感があり、喫煙者に好まれそうな雰囲気である印象。

引用元:https://rocketnews24.com/2012/07/02/226563/

しかし、このippukuは現在は閉鎖されていて、予想したよりも喫煙者の利用が少なかったのか事業がうまくいかなかったようです。

都内には当時、このippukuと同じレベルの無料で利用できる喫煙所が存在していました。

壁にコンセントは付いていませんが、喫煙することに関しては十分な環境を提供している喫煙スペースはいくつか存在していたために他との差別化が図れなかったのではないでしょうか。

50円と低価格ではあるものの、金銭を払ってでも利用するメリットがあまり感じられなかったのかもしれません。

また、他の喫煙スペースの場合はタバコを販売しているところもあるので、喫煙のついでにタバコを購入することができるという便利さがある。

ippukuは入場料で50円、ジュース(70円)を飲めば合計で120円かかるので、それならもう少しお金を出して喫煙が可能なカフェを利用した方が快適だと考える人もいるのではないでしょうか。

以上の事を考えると、ippukuには「どうしてもここを利用したい」という理由がないのかもしれません。

喫煙所の利用を有料にするのであれば利便性や快適性はもちろんですが、お金を払ってでも利用したいと思えるようなサービスを提供する工夫が必要と言えます。

有料の喫煙所が増えつつある

2022年9月に、東京・秋葉原のオフィスビル地下1階に新しく有料喫煙所が設置されたと情報番組(スッキリ)で紹介されました。

同時に20人が利用でき、入場のチェックは顔認証システムで行います。

こちらの喫煙所は利用料金が1カ月2200円となっていて、平日だけ利用すると仮定すると1日あたり100円くらいの料金となります。

こちらの喫煙所は平均250人くらいが利用していて、うち200人ほどはこのビルで働くサラリーマンの方です。

https://kakaku.com/tv/search/keyword=%E6%9C%89%E6%96%99%E5%96%AB%E7%85%99%E6%89%80/

企業のオフィスビルに有料の喫煙所を設置することで社員の方の多くが利用していることがわかります。

毎日ある程度の人数の方が利用するようになると、収益は安定しますしビジネスとして継続しやすくなります。

利用料金が安いので客単価が低く、有料喫煙所の経営には固定客の獲得は非常に重要な要素。

喫煙室の利用が1日100円というのが高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれですが、番組内では以下のような声が挙がったようです。

  • 1日100円は安い。
  • 勤務先に喫煙所が無くて、勤務先の極めて近くにあるのなら検討するかも。
  • 制服で公共の喫煙所には並びたくないから利用したい。
  • 設置場所が地下なので周りの目を気にしなくて済む。

 

一方で戸惑いの声もあるようです。

  • 無人なので不正利用の対策はどうするのだろう。
  • 喫煙禁止場所での喫煙時の罰金が安いから、歩きタバコする人が増えるかも。「吸うだけでお金を払え」となればタバコのポイ捨てが増えそう。
  • 一部のまじめな喫煙者による募金活動になりそう(笑)。マナーの良い喫煙者と悪い喫煙者が分れることになる。
  • タバコを購入する時点で税金を払っているのに、吸うだけでお金がかかるのはおかしい。公的なお金でも整備して欲しい。

 

設置場所や料金形態、快適な利用環境が提供できれば固定客の獲得に繋がるので収入の安定化に繋がります。

設備投資は必要ですが、たくさんいる喫煙者から認知、支持されるようになればビジネスとして成り立つ可能性があります。

その他、元喫煙者の方からは、「たばこ税を納めているのだから自治体や国が喫煙する場所を提供するべきだと思う。」という意見がありました。

確かにタバコを購入する際にはタバコ税を払っているので、その税金を喫煙所の設置に使ってくれればタバコ税の支払いに対して納得する喫煙者は多い気はします。

秋葉原には無料の喫煙所が何カ所か存在しますが、数百メートルに1箇所ほどしか設置されていないので喫煙所までの移動が大変です。

それなら近くにある喫煙所を「1カ月2,200円で毎日吸い放題(平日のみ)」を利用する方が楽だと判断する人は多いような気もします。

そして喫煙者の中には喫煙する姿を見られたくない人や非喫煙者からの視線が気になっていた人もいるのではないでしょうか。

お金を支払って喫煙所を利用することで周りの目を気にせず堂々と喫煙できるので、気持ち的に楽になる人も少なくないと思います。

有料喫煙所の設置によって喫煙マナーの向上に期待したい

わざわざお金を払ってまで喫煙所で喫煙することができる人は、普段から周りの人への配慮ができる人でしょう。

決められたルールやマナーを守れる喫煙者の多くは喫煙禁止場所では喫煙を控え、タバコのポイ捨てなどもしません。

例えば、当たり前のように路上喫煙するような喫煙者がお金を出してまで有料の喫煙所を利用するでしょうか?

今は、そのような人達はせいぜい無料の喫煙所を利用するくらいで、自分のお金を出して有料の喫煙所を利用する気はないかもしれません。

有料の喫煙所を利用する気が全くない人の中には、人目につかない場所で隠れて喫煙をする人もいるでしょう。

実際に都内ではビルの間でこっそりと喫煙している人の姿を目撃することもあります。

タバコを吸いたいけど有料の喫煙所は利用したくないという人の中には、一定数そのような行動をする人が存在するのは仕方がないことではあります。

一方で有料の喫煙所を利用する喫煙者に対しては、無料の喫煙所では体験できないような利便性やサービスを提供することで無料の喫煙所との差別化が可能になります。

現在は無料の喫煙所も存在していますが、近い将来に「すべての喫煙所は有料」というのが当たり前になっているかもしれません。

秋葉原の有料喫煙所のように、実際に多くの人が有料の喫煙所を利用していることを考えると、このような喫煙スタイルが今後主流となる可能性はあるのではないでしょうか。

喫煙所の利用が有料だとしても、利用する者にとって料金に見合った良いサービスであれば利用者の増加が期待できます。

喫煙者の多くが有料喫煙所を利用することで路上喫煙やタバコのポイ捨てなどの減少にも効果が発揮できそうです。

コロナの影響によって無料の喫煙所の多くが閉鎖されましたが、コロナ禍においては一度閉鎖された喫煙所が再び再開されることは期待できません。

無料の喫煙所はまだ存在していますが、今後徐々に閉鎖されていくにつれて多くの喫煙者が自分の喫煙スタイルを見直す日がやってくるでしょう。

オフィスや施設内での受動喫煙対策が求められている

ここ数年の間に国や自治体による受動喫煙対策の流れと新型コロナウイルスの感染防止対策によって喫煙所の閉鎖が相次ぎ、反対に有料喫煙所が設置されてきました。

改正健康増進法の施行によって施設の管理者は基準を満たした喫煙室の設置が義務付けられています。

しかしその設置は努力義務になっており、未だに設置が追い付いていない施設があるのが現状。

職場の近くに有料喫煙所が設置された場合、社員にはその有料喫煙所を使ってもらうことで職場内には喫煙室を設けない事業主が出てきてもおかしくありません。

喫煙室の設置には費用と場所が必要であり、設置に関して前向きに検討しない企業もあるかと思います。

しかし施設管理者の喫煙室の設置は義務であり、適切に対処しないと法律違反です。

そもそも屋内やオフィスの近くに喫煙所すらなく職場内で受動喫煙の被害が出るような状況であれば社員や社外の人達からの苦情が出ることや、改正健康増進法違反による指導や罰則のリスクが高まります。

いずれにせよ、受動喫煙の防止対策としての喫煙所の設置は、企業として放置できないものであり必要な処置です。

屋内全域を完全禁煙にしてしまうのは喫煙者への配慮が足りずトラブルの原因となるので、喫煙者と非喫煙者の両者に配慮した形を実現させるのが理想的ではないでしょうか。

職場環境が悪いと企業イメージの悪化に繋がりますし、社員に対しては働きやすく快適な職場環境を提供することも企業にとって大事なリスク管理の1つだと言えます。

喫煙所の設置によって一時的に費用がかかったとしても、社員が働きやすい環境になることで仕事の生産性が上がるなどのメリットも期待できるでしょう。

社員や関係者の意見を十分に取り入れ、企業として責任のある適切な対策を行っていくことが求められます。