2020年4月に全面施行された改正健康増進法により、全国の公共の場で喫煙が厳しく制限されました。一部の都道府県では、さらに独自で制定した受動喫煙防止条例を加えることで、自治体独自の対策を行っています。
2021年以降も大阪府や神奈川県など、受動喫煙対策の動きは各地で続いています。本記事では、2026年時点で把握できる最新の情報をもとに、都道府県別の条例内容をご紹介します。
基本となる改正健康増進法ではどのような定めがあるのか

各都道府県の受動喫煙対策条例を見る前に、まずは改正健康増進法について確認してみましょう。改正健康増進法では公共の場での喫煙の制限に関して、以下のように区分けがされています。
学校、病院、児童福祉施設等、行政機関、旅客自動車事業自動車・航空機
これらの施設は敷地内禁煙となっており、あらゆる施設の中で一番厳しい基準となっています。ただし、屋外において受動喫煙を防止するための必要な措置が取られていれば、喫煙場所の設置が可能です。ここでいう旅客自動車事業自動車とはバスやタクシーを指します。
上記以外の多数の者が利用する施設、旅客運送事業船舶・鉄道
オフィスビルや商業施設、駅、電車内、船など、公共施設全般に関しても原則屋内禁煙となっています。ただし、喫煙専用室や加熱式たばこ専用喫煙室を設けることで、室内に限り喫煙が可能です。敷地内の屋外の喫煙場所設置に関しては、特別規定は設けられていません。
飲食店
飲食店も基本的には原則屋内禁煙ですが、喫煙専用室や加熱式たばこ専用喫煙室を設けることで、室内に限り喫煙が可能です。加熱式たばこ専用喫煙室では飲食もできます。
また、経過措置として「喫煙可能室」を届け出ることで、これまでと同じように店内で喫煙が認められるケースがあります。喫煙可能室は次に当てはまる小規模店舗(既存特定飲食提供施設)であれば設置可能です。
・令和2年4月1日時点で営業している飲食店であること
・個人、あるいは資本金又は出資の総額5,000万円以下の会社が経営しているものであること
・客席面積が100平方メートル以下であること
これらに加えて、大企業が発行株式の2分の1を有している場合は対象から除外されます。大手チェーンの直営店はほぼ喫煙可能室の設置は不可能です。

上記はあくまで経過措置であり、今後撤廃される可能性のある枠組みです。実際、大阪府では客席面積30平方メートル超の店舗が2025年4月1日から原則屋内禁煙となりました。さらに秋田県でも、2028年4月1日から従業員を雇用する店舗での喫煙可能室が設置不可となる予定です。
喫煙室には20歳未満の入場禁止
施設内に設置した喫煙室には、利用者はもとより従業員も、20歳未満の立ち入りが禁止されています。つまり20歳未満の従業員は清掃等での入室もできませんので、管理者はシフトを組む際に配慮が必要です。
また喫煙目的店においては、小規模であるがゆえに喫煙が経過措置として認められている喫煙可能店においても、客席で喫煙可とする場合は20歳未満の勤務は不可になります。
つまりこれまで喫煙可能な店内で働いていた20歳未満の雇用を終了するか、店内を完全禁煙にするか、客席を禁煙にして喫煙専用室を設けるかの三択を迫られるということになります。
喫煙室を設ける場合は喫煙の掲示義務あり

(出典:厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙」/https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/sign/)
施設内に喫煙室を設けている場合は、その旨を標識にして掲示する義務があります。
・喫煙専用室
・加熱式たばこ専用喫煙室
・喫煙目的室
・喫煙可能室
上記4室には、その部屋であることが分かるよう標識を設置します。また、喫煙室を設けている施設自体にも「喫煙専用室あり」「加熱式たばこ専用喫煙室あり」「喫煙目的室あり」「喫煙可能室あり」という施設入口用の標識を掲示しなければなりません。
【2026年最新版】各都道府県別の受動喫煙防止条例

さて、上記の改正健康増進法を踏まえた上で、各都道府県で独自に定める受動喫煙防止条例がどのような規制を行っているのか見ていきましょう。
全体的に、東日本に受動喫煙防止条例を制定している都道府県が多いです。ただ、今回扱わない都道府県でも、傘下の市区町村で独自に受動喫煙防止条例を制定しているところはあります。
北海道
北海道では、令和2年3月に「北海道受動喫煙防止条例」が制定されました。保育所、認可外保育施設、幼稚園、認定こども園、小・中・高校等において完全に敷地内禁煙が求められています。改正健康増進法では屋外に喫煙場所を設置できることになっていますが、本条例ではより強い制限を設けています。
一般の事務所、宿泊施設、飲食店、スーパー、コンビニエンスストア等に関しては、屋外に喫煙所を設置する場合「施設利用者の通行量等を考慮し、吸い殻入れ等の設置場所に配慮する」必要があります。改正健康増進法には特段の規定がないため、一歩踏み込んだ対策を求めているといえます。
標識に関して、改正健康増進法では完全禁煙の場合は標識の掲示は特に義務ではありません。ただし、北海道受動喫煙防止条例では完全禁煙の飲食店や喫茶店は、主な出入口に禁煙である旨の標識を掲示しなければなりません。
(出典:https://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kth/jk/16judoukituenboushijourei.html)
秋田県
「秋田県受動喫煙防止条例」は、全国的に見ても規制が厳しい条例の一つです。
幼稚園・学校・児童福祉施設などの敷地内は完全禁煙で、大学・医療機関・行政機関は屋内での喫煙場所設置は不可、屋外も原則設置できません。駅・空港・バスターミナルなどの交通施設も喫煙場所の設置不可・完全禁煙とされ、改正健康増進法よりも規制が強くなっています。
加熱式たばこ専用喫煙室での飲食は改正健康増進法では認められていますが、秋田県条例では「飲食可の指定(加熱式)たばこ専用喫煙室は設置しないように努めること」を努力義務として奨励しています。完全禁煙の飲食店は、その旨が分かる標識の設置も義務となっています。
さらに秋田県条例には、令和10年4月1日施行予定の追加規定があります。この改正により、従業員を雇用する飲食店(家族や家事使用人を除く)は喫煙可能室を設置することができなくなり、原則屋内全面禁煙、もしくは喫煙専用室の設置に切り替える必要が生じます。
国の経過措置に先行して小規模店舗への規制を強化する、全国でも先進的な内容です。
(出典:https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/90274)
山形県
山形県受動喫煙防止条例では未成年の教育機関や児童福祉施設、医療機関では「屋外にも喫煙場所を設けないよう努めるものとする」とされています。禁止にはなっていませんが努力義務です。改正健康増進法よりはやや強めの規制です。
社会福祉施設や美術館、バスターミナル、金融機関、映画館など公共性の高い施設では屋内禁煙とされており「屋内に喫煙専用室を設けないよう努めるものとする」とされています。禁止ではありませんが努力義務です。
(出典:https://www.pref.yamagata.jp/090015/kenfuku/kenko/tabako/judoukituenbousitaisakukankei/jourei.html)
東京都

(出典:東京都保健医療局/https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/kensui/tokyo/kangaekata_public.html)
「東京都受動喫煙防止条例」は飲食店に対する規制が強めとなっています。従業員がいる飲食店は原則屋内禁煙で、これは喫煙専用室があれば問題ありません。
しかし、小規模飲食店が喫煙可能店として営業する場合は、東京都受動喫煙防止条例ではオーナーかその家族以外に働いている人がいてはいけません。従業員がいる場合は完全禁煙にするか、喫煙専用室の設置が義務付けられます。また完全禁煙の飲食店はその旨がわかる標識の設置をしなければなりません。
また、小中高校等の未成年の教育機関は敷地内であれば、屋外でも喫煙場所を設置不可としています。厳密には禁止ではありませんが、強めの努力義務です。
神奈川県
神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例は、改正健康増進法を踏まえて令和2年4月1日に改正施行されました。さらに令和6年4月1日の改正施行により、喫煙や受動喫煙の定義が健康増進法と同一のものとされました。
なお、令和6年4月1日の改正では、施設の全部を禁煙とした場合の禁煙標識の掲示義務は廃止となっています。国の法律と同等の定義に揃えることで実務上の分かりにくさを解消した形です。
(出典:https://www.pref.kanagawa.jp/docs/m7k/tabako/odawara-judoukitsuen.html)
大阪府

(出典:大阪府/https://www.pref.osaka.lg.jp/o100070/kenkozukuri/judoukitsuen/index.html)
「大阪府受動喫煙防止条例」は段階的に施行されてきましたが、2025年4月1日に全面施行となりました。
全面施行の最大のポイントは、飲食店の規制強化です。改正健康増進法では、客席面積100平方メートル以下の既存小規模店舗に喫煙可能室の設置が認められていますが、大阪府条例ではこの基準をさらに厳しくしています。
2025年4月1日からは、客席面積30平方メートルを超える既存店舗も原則屋内禁煙となります。喫煙可能室を設置できるのは、2020年4月1日時点で営業しており、個人経営または資本金5,000万円以下で客席面積30平方メートル以下の店舗のみです。
(出典:https://www.pref.osaka.lg.jp/o100070/kenkozukuri/judoukitsuen/index.html)
兵庫県
兵庫県受動喫煙防止条例では未成年の教育機関、児童福祉施設、病院などでは屋外喫煙場所の設置を認めていません。さらに、施設の敷地周辺での喫煙も禁止しています。
また、官公庁の施設は全て完全禁煙です。喫煙専用室の設置も認めていません。
また兵庫県独自の取り組みとして妊婦の受動喫煙防止に力を入れています。罰則はありませんが、妊婦が喫煙区域に立ち入らないこと、妊婦が喫煙をしないことが条例に決まりとして明記されており、さらに施設管理者が妊婦を喫煙区域に立ち入らせないことが求められています。
(出典:https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf17/zyudoukituenkaiseizyourei.html)
岡山県
岡山県受動喫煙防止条例では、飲食店の喫煙可能室に関して制限を加えています。改正健康増進法では屋内全部を喫煙可能室にすることが可能ですが、岡山県受動喫煙防止条例では屋内の全部を喫煙可能室としないよう努める努力義務を定めています。従業員の受動喫煙を防ぐための措置です。
(出典:https://www.pref.okayama.jp/page/654936.html)
自治体の受動喫煙防止条例を要確認

受動喫煙防止条例を制定している都道府県を比較すると、特に厳しいのは秋田県・兵庫県・大阪府です。
秋田県と兵庫県は、未成年や妊婦などに受動喫煙の被害が及ばないよう、公共の場の規制を強めています。また、大阪府は2025年4月の全面施行において、客席面積30平方メートル超の既存飲食店も原則屋内禁煙に踏み込みました。
今回紹介した都道府県以外にも、市区町村レベルで独自の受動喫煙防止条例や路上喫煙禁止条例を定めている自治体が多数あります。自分が住んでいる、あるいは事業を行っている自治体に受動喫煙防止条例が設けられているのかは、確認してみてください。


