健康意識の高まりから、受動喫煙対策は企業や施設にとって喫緊の課題となっています。健康増進法の改正により、多くの施設で原則屋内禁煙が義務付けられ、喫煙環境の整備が求められているのです。その解決策の一つとして注目されているのが「屋内用喫煙ブース」です。
今回は、屋内用喫煙ブースの基本的な特徴や導入メリット、適切な選び方などを紹介します。導入を検討する際に必要な情報を網羅的に解説しているため、ぜひ参考にしてください。
屋内用喫煙ブースとは?基本的な特徴と仕組み
屋内用喫煙ブースとは、建物や施設内に設置される喫煙専用の個室のことです。喫煙による煙やニオイが周囲に漏れるのを防ぎ、非喫煙者の受動喫煙を防止する効果が期待できます。
屋内用喫煙ブースの種類には、主に「密閉型」と「簡易型」の2つがあります。
・密閉型
壁や天井で完全に囲まれ、出入り口もドアで仕切られているタイプです。高性能な換気システムや空気清浄機が組み込まれており、煙やニオイを強力に除去します。より高い受動喫煙防止効果が期待でき、多くの人が利用する場所に適しています。
ただし、密閉されるため、消防法への対応等に留意する必要があります。
・簡易型:
パーテーションや低い壁で区切られた半開放的なタイプや、天井部分のみで煙を吸い上げるタイプなどがあります。完全に密閉されていないため、煙やニオイの漏れを完全に防ぐことは難しいですが、比較的安価な点が特徴です。小規模な店舗や、特定の場所での一時的な利用が主となっています。
屋内用喫煙ブースを導入するメリット
屋内用喫煙ブースを導入する主なメリットは、以下の3つです。
・受動喫煙対策としての効果
・施設イメージの向上、クレーム削減
・喫煙者と非喫煙者の共存環境づくり
それぞれ詳しく解説します。
受動喫煙対策としての効果
屋内用喫煙ブースを導入する最も大きなメリットは、従業員や利用客の受動喫煙を効果的に防止できる点です。喫煙ブースを設置すれば、指定された場所でのみ喫煙行為が行われるようになり、非喫煙者の健康を守ることができます。
施設イメージの向上、クレーム削減
受動喫煙対策が不十分な場合、利用者からのクレームや不満の原因になる可能性があります。喫煙ブースを導入することで、快適な環境を提供しているアピールになり、施設全体のイメージ向上につながるでしょう。
また、喫煙者・非喫煙者双方にとって利用しやすい環境を整えれば、顧客満足度の向上にも貢献します。
喫煙者と非喫煙者の共存環境づくり
喫煙ブースを設置することで、喫煙者と非喫煙者が互いに配慮し、共存できる環境を構築できます。喫煙を完全に禁止するわけではないため、喫煙者もストレスを感じません。
また、喫煙ブースがもたらす役割は、タバコのニオイや煙に嫌悪感を抱く非喫煙者にとっても、大きなものがあります。お互いが共存できる環境により、社内全体の雰囲気がよくなるケースも見られます。
屋内用喫煙ブースの選び方
喫煙ブースを選ぶ際は、自社のニーズや設置場所の条件に合わせて、以下の点を考慮することが重要です。
・アフターサポートやメンテナンス体制で選ぶ
・性能で選ぶ
・法令や自治体ルールに準拠しているか確認する
アフターサポートやメンテナンス体制で選ぶ
喫煙ブースは長期的に使用する設備です。導入後のフィルター交換、清掃、故障時の修理など、アフターサポートやメンテナンス体制が充実しているメーカーを選びましょう。
具体的な内容はホームページに書かれていることもありますが、より詳しく知りたい場合は、直接問い合わせることがおすすめです。
性能で選ぶ
喫煙ブースの効果を最大限発揮するためには、性能もチェックする必要があります。換気の精度は高いのか、耐久性は優れているかなど、あらかじめ調べておきましょう。
また、「静音性」も利用者や周囲の環境に影響を与えるため、静音設計の製品を選ぶことで、快適な利用環境を提供できます。
法令や自治体ルールに準拠しているか確認する
喫煙ブースは国の健康増進法だけでなく、各自治体の条例や消防法、建築基準法などの規制に準拠している必要があります。特に、改正健康増進法では喫煙室の技術的要件が細かく定められています。
導入を検討する際は、必ずこれらの法令や自治体独自のルールを満たしているか、メーカーや専門業者に確認しましょう。
屋内用喫煙ブースの導入前に確認したい2つのポイント
必要な設置スペース
喫煙ブースのサイズは、利用人数や設置場所の広さによってさまざまです。設置を検討している場所の寸法を正確に測り、通路や扉の開閉スペース、メンテナンス用のスペースなども考慮に入れて、適切なサイズのブースを選びましょう。
換気システムの排気口の位置や、電源の確保も確認が必要です。
設置費用とランニングコストの目安
喫煙ブースの導入には、本体価格に加えて設置工事費、電気工事費などがかかります。また、導入後はフィルター交換費用、電気代といったランニングコストも発生します。これらの初期費用とランニングコストを総合的に見積もり、予算に合わせた製品を選ぶことが大切です。
なお、大阪府では「令和7年度大阪府公衆喫煙所設置補助金」として、喫煙所の設置に対する補助を実施しています。屋内設置であれば上限350万円、屋内設置であれば上限150万円の補助を受けることが可能です。
これまで内部排気型の喫煙ブースは補助対象ではなかったものの、今回は対象に含まれることとなりました。費用面がネックになっている事業者にとっては、嬉しい制度と言えます。
(出典:大阪府「大阪府公衆喫煙所設置補助制度」/https://www.pref.osaka.lg.jp/o100070/kenkozukuri/judoukitsuen/kousyukitsuenjo.html)
屋内用喫煙ブースに関するよくある質問・回答
屋内用喫煙ブースに関するよくある質問と、その回答について3つ紹介します。
喫煙ブースの設置に許可は必要ですか?
設置する際、国から特別な許可が必要なわけではありません。しかし、改正健康増進法や各自治体の条例に定める「技術的要件」を満たす必要があります。また、施設の用途や規模によっては、消防法や建築基準法に基づく届出、確認が求められるケースも出てくるでしょう。
小規模店舗でも導入できますか?
小規模店舗でも導入は可能です。近年では1人用から数人用のコンパクトなタイプ、省スペースで設置できる設計の喫煙ブースも多くそろっています。既存空間を有効活用できるよう、レイアウトや動線を考慮した上で、最適なサイズのブースを選ぶことが可能です。
工事にはどれくらいの日数がかかりますか?
製品の種類や設置場所の条件、既存設備の有無によって異なりますが、一般的には数時間か1日程度で完了します。ただし、電気工事や換気ダクトの設置など、大規模な工事が必要な場合は数日かかることもあります。
具体的な工事期間については、導入を検討しているメーカーや施工業者に確認しましょう。
屋内用喫煙ブースが設置されているお店に潜入取材!
屋内用の喫煙ブースはオフィス、飲食店などで大いに活躍しています。今回は、屋内用喫煙ブースが設置されているお店に潜入取材を実施してみました!
1つ目のお店は、神奈川県にあるカフェです。関内駅からお店まで歩いていきます。
約7分歩いた先に、目的のお店がありました!
お店の外には以下のような貼り紙もあります。喫煙専用室、さらには喫煙ブースの設置など、喫煙者に対する配慮もされているお店ですね。
お店に入ってすぐのところに、喫煙ブースが設置されていました!こちらは2人が利用できるサイズ感です。
より拡大した写真がこちらです。
オープンしてから間もない時間帯であったため、利用者は多くありませんでした。しかし、想像するよりもかなり静かで、デザインもカフェの雰囲気にマッチしているように映ります。
喫煙ブースの存在によって、喫煙者と非喫煙者の共存ができると考えれば、大きな意味があると言えるでしょう。
今度は東京のお店にも潜入取材を実施しました。銀座周辺を歩いていきます。
こちらも有名なカフェのお店です。
ややリッチな雰囲気がありますね!利用者はさまざまな年代の方がいました。
店内には多くの人がいたため、撮影は難しい状況でした。店内は禁煙スペースと喫煙スペースに分かれており、喫煙専用ルームの中に喫煙ブースが設置されています。
以下の写真中央に黒い線が入っていますが、こちらが喫煙ブースです。加熱式タバコは喫煙専用ルームで、紙巻タバコは喫煙ブースを利用する形式になっています。
喫煙ルームを用意しつつ、喫煙ブースを導入する店舗も現在は珍しくありません。紙巻タバコは清掃の負担が大きくなりやすいため、喫煙ブースを導入すると清掃の負担も減らせます。
喫煙者を取り込みたい飲食店、および分煙を実施したい企業は、屋内用喫煙ブースの導入が適しています。
まとめ
屋内用喫煙ブースの導入は、受動喫煙対策が求められる現代において、非常に効果的な方法と言えます。法令遵守はもちろん、施設のイメージ向上や従業員・顧客満足度の向上といった、多岐にわたるメリットを享受できるのです。
導入にあたっては、性能やアフターサポートの有無などを確認することが大切です。設置スペースや費用、そして補助金の活用も視野に入れると、スムーズかつ費用を抑えた導入が可能になります。
適切な喫煙環境を整備し、誰もが快適に過ごせる空間づくりを実現しましょう。