昔は切っても切れない関係だった煙草とコーヒー、煙草とアルコールですが、お店で自由に同時に楽しめる時代は過去のものとなりつつあります。そもそもなんでこんなに相性が良かったのか、そして、本当にもうお店で楽しむ術はないのか。喫煙目的店のカフェと合わせて紹介します。
煙草を吸うと珈琲が飲みたくなるメカニズム
「煙草と珈琲の組み合わせが最高!加熱式たばこ喫煙室がある喫茶店は、煙草を吸いながら珈琲が飲める日本に残された最後の楽園だ」という方も多いはずです。そもそもなぜ煙草を吸うと珈琲が飲みたくなるのでしょうか。
珈琲が煙草とセットにされてきた歴史はなかなか長く、17世紀のヨーロッパに遡ります。様々な職業や階層の人々が集まる社交場として、珈琲と煙草を提供したと言います。煙がもうもうと立ち込める中、コーヒーカップを手に商売の取引をしたり、政治活動をしたり芸術談義を戦わせたり…。受動喫煙に反対する現代の専門家が見たら卒倒する風景に間違いありません。
健康にとっての是非はともかく、つい10年ほど前までは喫茶店で煙草を吸う光景は当たり前でしたので、人類は17世紀から400年に渡って煙草と珈琲のセットを愛し続けたということになります。
相性が良いとされる理由は、煙草のニコチンと珈琲のカフェインの相乗効果によるものというのが有力です。煙草のニコチンは血管を収縮させます。珈琲のカフェインは血管を拡張させます。そして、ニコチンとカフェインの両方を摂取するとドーパミンが分泌され、気持ち良いと感じます。ドーパミンが延々出るループに入り、血管が広がったり縮んだりするため快楽が高まる理由なのではないか、というわけです。暑いサウナと冷たい水風呂に交互に入るのが気持ちいいのに似ている感じかもしれません。
他にも珈琲で喉に付着した煙草の粒子が流されるから、ニコチンがカフェインの代謝を促進するからなどの説があります。
また、煙草を吸うと味覚が鈍感になるため珈琲の苦味が鈍った舌にちょうどいい刺激になるという理由もあるようです。珈琲を飲みながら喫煙するときはアメリカンや浅煎りタイプでなく、エスプレッソや深煎りのイタリアンローストを飲むという方は多いのではないでしょうか。
煙草を珈琲と一緒に嗜むことでのメリット
煙草を珈琲と一緒に嗜むことで、別々に楽しむよりもリラックスできると感じます。「ちょっと一服」というと煙草やお茶をしながら休憩することを指しますが、現在ではお茶だけでなく珈琲休憩の際にも一服という言葉を使うことが多いです。この言葉でもわかるようにリラックスするための休憩には煙草や珈琲はかかせません。
17世紀のヨーロッパではイギリスのコーヒーハウスやフランスのカフェのように珈琲と煙草文化が花開きました。フランス革命の重要な舞台になったり、大きな株取引が行われたり、歴史上の大事件を語る際にも存在を避けては通れません。珈琲と煙草によりリラックスすることで、アイデアが沸き議論が活発になったと考えることもできるのではないでしょうか。
また、文化芸術の生まれる舞台にもなっており、多くの劇作家や哲学者が思想を語ったり、創作について意見交換を行う場にもなりました。浮世から離れて落ち着いてものを考えるのに煙草と珈琲の組み合わせはいいことの現れといえます。
煙草を吸うとアルコールが飲みたくなるメカニズム
「煙草と酒も鉄板の組み合わせ!一日の終わりに居酒屋とかバーで酒飲みながら煙草バカスカ吸うのが最高!というより、飲み会だと煙草がないと間がもたない!」という方も多いのではないでしょうか。お酒を提供するお店も喫茶店と同様に完全禁煙もしくは喫煙室設置に移行しつつあります。飲食しながら好き放題喫煙できた頃が懐かしいです。
煙草とアルコールに関しては特別嗜好品として相性が良いというデータはありません。とはいえ、人類史上でもセットで嗜む歴史は長いです。
酒と煙草を同時に摂取することでリラックスできると感じている人は多いはずです。また、長時間滞在することになる飲み会では話題や面子によっては退屈することもあるかもしれません。煙草があれば手持ち無沙汰にならないし、退屈をごまかすこともできるでしょう。
煙草をアルコールと一緒に嗜むことでのメリット
煙草と酒を一緒に楽しむのは主に空間を共有することのメリットが大きいように思います。
一昔前は「酒と煙草は大人の男の嗜み」とされており、両方やることで大人になったと見做されました。今でも中国ではその傾向が残るようで、贈答品にも煙草が好まれる様です。
煙草と酒を一緒に嗜むことで大人の仲間入りをしたとみなされ、仲間としての情報を知れたり連帯感が生まれたりします。煙草の煙がもうもうとする中で顔を寄せ合って焼酎を飲む、これはなんだか秘密結社的な空気があり、子供や女性は入り込めない雰囲気があります。今では都心部でほとんど見ることはない光景ですが、地方だとまだ地元の寄り合い的な飲み会で目にすることはあるかもしれません。
飲み会で煙草の銘柄やライターから会話が弾むことがありますし、コミュニケーションツールとしても煙草は優秀です。
煙草空間を大切にする新たな流れ
このように、珈琲やアルコールは人類の歴史の中で「煙草と一緒に楽しむのが当たり前」でした。しかし、昨今の健康意識の高まりによりその文化は消えようとしています。喫茶店も飲食店も禁煙や分煙が当たり前となり、喫煙しながら楽しめる店を探すのは大変になりました。
そんな中、珈琲と煙草を同時に楽しむことをコンセプトにしたカフェや喫茶店が新たに生まれています。これは喫煙目的店として営業することで「店内のどこでも喫煙できるお店」です。20歳未満は客も従業員も立ち入り禁止にすることで大人がリラックスできる空間を実現しました。
ここからはそんな「喫煙と煙草を同時に楽しめるお店」を紹介します。
SMOKIST COFFEE
SMOKIEST COFFEEは「大人の嗜好品を愉しむ場所」をテーマに喫煙目的店として煙草と珈琲を同時に楽しめる場所です。現在東京に4店舗、仙台に1店舗を展開しています。シャノアールを運営するC-United社によるコーヒーチェーンです。
特徴は厚生労働省が定める基準よりも8倍の換気回数を実現した換気設備。4分に1回空気を入れ替え、煙草の粉塵も95%以上除去しています。綺麗な空気の中で煙草を吸えるのは嬉しいですし、服や髪の毛が煙草臭くならないので仕事の合間や人に会う前に時間を潰すのにももってこいです。
メニューを見るとシャノアールや同社の主力チェーンであるベローチェとほぼ同じです。ただし、店によって若干の違いはあるとのこと。また、店内で煙草の販売も行っています。
セガフレードザネッティの一部店舗
セガフレードザネッティは店舗によって喫煙環境を分けていますが、喫煙目的店も設置しています。現在都内を中心に全国21店舗を展開していますが、新宿南口店と泉岳寺店は喫煙目的店です。他店舗も分煙体制での喫煙が可能な店舗が多くあります。
現在国内では非常に稀少なイタリア系のコーヒーチェーンです。深煎りの珈琲やエスプレッソはシアトル系のコーヒーチェーンや日本のコーヒーチェーンとは一味違います。珈琲との相性は抜群なので、是非見つけた際は楽しんでみましょう。
ルノアールの一部店舗
喫煙するミドル層の聖地として一時期ルノアールは有名でした。しかし、ルノアールでも改正健康増進法は例外でなく、完全禁煙や分煙になったため煙で店内が見えない光景はもはや昔日のものです。
しかし、一部の店舗ではあのルノアールの風物詩ともいえる光景が残っています。都内で有名なところだと、ルノアール恵比寿東口店は喫煙目的店として喫煙者のオアシスです。
いわゆる換気や空気清浄などもそんなに行われていないとの口コミがあるため、煙が立ち込める中でゆったりと煙草の煙をくゆらせるという、古き良き時代の喫煙が可能です。非喫煙者の人を伴った入店にはお勧めできませんが昔ながらのストロングスタイルな喫煙者にはおすすめです。
珈琲と煙草のマリアージュを楽しもう
珈琲と煙草の組み合わせは最高なので、「外出時にもお店の美味しい珈琲を楽しみながら喫煙をしたい」という方は多いはずです。そういった方の要望に対応するために上記のような新しいタイプのお店が増えていきました。
その流れもあり、これまでのカフェ・喫茶店においても喫煙専用室や喫煙ブースを設置するお店が増えています。2020年の改正健康増進法の施行以降、喫煙できる場所が限定されてきている一方で、喫煙者が急速に減っているというデータはありません。それゆえに、煙草が吸えるカフェや飲食店というのはとても重宝されるようになっています。
もちろん大事なことが、煙草を吸わない人への配慮ができているかどうかです。一人で足を運ぶ場合は前述した喫煙目的店の満足度が高くなりますが、煙草を吸わない人と一緒に入るお店を考えた際には、煙草の臭いがしない、しっかりとした分煙対応ができているお店が望ましいでしょう。
珈琲店やアルコールを扱う飲食店において、すべての人に煙草を楽しんでもらう、一緒に過ごしてもらうことを大切にしていきたいですね。