受動喫煙とは喫煙者が吸ったたばこの副流煙や有害物質を、間接的に周囲の人が吸うことです。受動喫煙によって健康被害が発生することが報告されており、現在施行中の受動喫煙防止条例や健康増進法も、非喫煙者の受動喫煙による健康被害を防ぐ狙いがあります。どのような健康被害が受動喫煙によって起こりうるのか、企業やお店はどのように受動喫煙対策をすれば良いのか解説します。
受動喫煙によって起こりうる疾患の可能性
受動喫煙によりリスクが高まるとされている疾患として、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群(SIDS)が挙げられます。
肺がん
肺がんに関して、日本人の受動喫煙による肺癌になるリスクは普通の人の約1.3倍という研究結果が出ています。これは2016年の国立ガン研究センターの研究結果です。
また、受動喫煙で発症する肺がんの中でも肺腺がんが全体の8割を占めていることもわかっています。肺腺は肺の奥にあり、気管支にできる扁平上皮がんと小細胞がんに比べると喫煙者の場合のガン発生率との関連性はこれまでよく解明されていませんでした。
研究が進み、喫煙者はフイルターを通して主流煙を吸い込むので一定以下の大きさの煙の粒子は肺に入らないが、副流煙を受動喫煙した場合フィルターを通さない小さい粒子が肺の奥まで届くのが原因なのではないかとわかってきました。
虚血性心疾患
虚血性心疾患は心臓に十分に十分に血液が行き渡らない病気です。動脈硬化や血栓などで血管が細くなったり詰まることで発症します。虚血性心疾患になると狭心症や心筋梗塞などの病気のリスクが上がります。
非喫煙者にとっては受動喫煙によって虚血性心疾患のリスクが上がるため、周囲の喫煙者から副流煙の被害をどう防ぐかが重要です。
脳卒中
脳卒中は脳への血流が滞ることで脳の神経細胞に障害が発生する病気で、脳梗塞やくも膜下出血なども脳卒中の一種です。喫煙者は非喫煙者に比べての発症のリスクは高くなるといわれています。
子どもの受動喫煙による健康被害
子どもの受動喫煙による健康被害は様々報告されています。副流煙を普段から吸う環境の子どもは血中のニコチンの濃度が高く虫歯になりやすくなることがわかっています。副流煙が多い環境から隔離すると、1/4の子どもに虫歯の発生がなくなりました。
他にも中耳炎の発生率が最大4倍近くになったり、身長の伸びが悪くなったりします。肺炎や気管支炎、咳やぜい鳴なども発生しやすくなり、健康被害や成長阻害などリスクが大きいです。
完全禁煙という選択肢か、煙を排除する喫煙対策か
副流煙により生まれる健康被害というものは存在します。しかも喫煙を望まない人のリスクを増大させることを考えると、絶対に防がなければなりません。企業のオフィスや飲食店などの施設においては乳幼児や子どもを含めた非喫煙者が利用しますので、完全禁煙もしくは分煙対策が必要になります。
2020年4月1日から施行された改正健康増進法により、施設や事業所においては原則喫煙禁止となりました。喫煙可にする場合は専用喫煙室などを設け、受動喫煙がされないような設備を整えなければなりません。どのような設備を整えなければならないのでしょうか。
完全禁煙の場合
完全禁煙の場合はシンプルに敷地内を完全禁煙に決めれば完了です。ただし、これまで喫煙可の空間だった場合、壁紙や天井、床、調度品などに有害物質が付着しています。現在禁煙とした場所でたばこの匂いがする場合は、空気中に有害物質が浮遊しており受動喫煙をしているのと同じ状態です。こういった場所は健康被害を考えると、内装等の設備を一新する必要があるといえます。
また大事なことは、完全禁煙環境にしたとしても、オフィスやお店に出入りする人が全員禁煙者になるわけではないということです。どこかで煙草を吸える環境は探すこととなり、いわば喫煙者への配慮としては万全ではないということは考えなければならない点です。
分煙の場合
分煙の場合は、単に喫煙所を作ればいいわけではありません。施設によって要件が定められており、適合した内容でなければ法で罰せられます。一般的な事業所や商業施設と飲食店で内容が異なります。施設の入り口や店内に分煙時の状況を示すステッカーを貼ることが義務付けられており、意図せぬ受動喫煙が起こらないような告知が必要です。
・喫煙専用室
喫煙専用室は喫煙をすることだけを目的に作られる専用室で、屋内に副流煙が一切漏れないような設備である必要があります。室内は喫煙のみに限定しており、飲食サービスの提供や事務作業などはできません。
・加熱式たばこ喫煙専用室
加熱式たばこ喫煙専用室は加熱式たばこのみ喫煙が可能で、室内では飲食が可能です。ただし、20歳未満の入室は禁じられています。
加熱式たばこは煙が見えないことから副流煙による受動喫煙の被害もないのではと考えがちですが、実際は空気中に有害物質は放出されており、健康被害の可能性は否定できません。
・喫煙目的室
飲食店やタバコ販売店に限定して認められている分煙対策です。主たる目的が喫煙であるとされるお店については、20歳未満の入店を禁止する喫煙目的室・喫煙目的店として営業ができます。
・喫煙可能店
経過措置として設けられた喫煙可能店は、条件を満たした小規模飲食店がこれまでと同じ喫煙状況で営業できることを定めています。喫煙可能店は個人や家族で営業しているお店を前提にしているため、法施行前にも店内全エリアで喫煙が可能だったケースも少なくありません。そのため、全く受動喫煙へのケアがされていない喫煙可能店もあるため、利用者としては入店の際に気をつける必要があります。
詳しくはこちらのコラムをご参照ください。
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